私達の中で一番辛そうにしていた司が、忍者を殴ろうとした。



「てめぇ……!」


「やめろ、司」



司の拳を止めたのは、深月だった。


殺気立っていた司に、深月はもう一度「やめろ」と伝える。


静かな数秒が、流れた。



「まあ、いいや」



忍者の声が、地下に響いた。


私達の視線が、忍者に集まる。



「あんたらからの情報はなくていい。今日は、大サービスだぜ?」



忍者は、気が変わったのか、口角を上げて言った。




「嘘の噂を流したのは、クスリを売ってる張本人。――“とある売人”さ」




どうして、自ら提案した交換条件をなくして、情報を教えてくれる気になったんだろう。


その疑問の答えは、明確には出なかった。


でも、もしかしたら私の情報は本当はほとんど知っているのかもしれない、と確信に近い気持ちで思った。