私達は、忍者に私の名前を、しかもフルネームを明かしたりはしなかった。
それなのに忍者は、私が“山本羽留”だということを知っている。
そのことに、深月はひどく恐れた。
「チッ」
舌打ちをしながら、忍者から手を放す深月。
「こりゃ意外だわ」
独り言をこぼした忍者の視線が、私に向けられた。
「ここまで大事にされてるとはな。本当に使えそうだな、あいつ」
忍者の呟きを、私達の耳が拾うことはなかった。
忍者のヘーゼル色の瞳に、ゾクリと背筋が凍る。
「で?何を教えろって?」
「嘘の噂を流した奴のことだっつってんだろ?」
「そうだった、そうだった。……教えてもいいけどさ、その前にその女についての情報を一つでいいからちょうだい」



