今は、ちょうど午後6時だった。
もうこんな時間なんだ!
早く黒龍のたまり場に戻らないと。
「うわっ」
「きゃっ」
携帯を見ていた私は、前を歩いていた誰かとぶつかり、転んでしまった。
落とした携帯を、ぶつかった誰かが拾ってくれた。
「すみません」
「いえ、こちらこそ」
視線を上げると、そこには栗色の髪をした男がいた。
あれ?この人、どこかで……。
「大丈夫ですか?」
「あ、は、はい」
前方不注意だった私が悪いのに、私のことを気遣ってくれるなんて、優しい人だなぁ。
栗色の髪の男は私に携帯を渡すと、もう一度謝ってから、私の横を通り過ぎていった。



