「羽留ちゃん」
「博さん……?」
「無理しすぎたらダメだよ」
博さんはそれだけ言うと、カウンターに座った私の頭をポンポンと撫でた。
涙腺が緩みそうになった。
「今も、黒龍と一緒にいるの?」
「はい。でも、」
「わかってる。自分で選んだことなんでしょ?」
博さんは、私が言おうとしたことを、ずっと前から気づいていたような口調で言った。
どうして、博さんにはわかってしまうんだろう。
博さんの瞳だけには、偽りも誤解もない真実が映っているのかもしれない。
「博さんの言っていた通り、本当に怖い人はいませんでした」
呟くように言った私に、博さんは何も言わずに、ひだまりのような笑顔を向けた。
博さんの言葉があったから、私は今黒龍と一緒にいる。



