黒龍と離ればなれになるチャンスなんて、来なくていい。
どんなに危険なことが起こったとしても、逃げない。
そう考えてしまう私はきっと、もう“黒”に染まりきってしまったのだろう。
「あははっ」
「……ど、どうして笑うの?」
深月がいきなり笑い出して、私はキョトンとする。
私、変なこと言った?
いや、まあ、一般的に考えたら変なんだろうけど。
「出会った頃に比べたら、随分と図太くなったなって思ってさ」
深月は嬉しそうにそう言うと、雨で濡れた私の髪をくしゃくしゃと乱暴に撫でた。
深月の大きな手のひらの温もりで、頭の痛みが少し治まった気がした。
「ちょ、あの、」
心臓がドキドキ高鳴っていることに気づいていない私は、褒められているのかよくわからなくて、反応に困っていた。
けど、なんとなく、笑顔になった。



