黒龍のたまり場に向かう途中。


私寄りに傘をさしてくれている深月が、「なあ」と話しかけてきた。


時々ぶつかる肩が、熱い。



「なに?」


「本当に、いいのか?」


「痛みは大したことは……」


「頭のことじゃねぇよ」



じゃあ、なんのこと?


首を傾げた私に、深月は言葉がつっかえたように目を泳がせた。



「深月?」


「俺らから逃げられるチャンスは、もう来ねぇかもしんねぇのに」



深月の呟き声は、なんだか弱々しくて。


夜の街をさまよう迷子のようで、捨てられた子犬のようで。


私のせいでそんな声を出させていると思うと、胸にチクリと小さなトゲが刺さった。