深月の薄い黒の瞳は濁って、何も映していないようで。


鉄パイプを振り上げた深月が、感情のないロボットのように見えた。


何も見えていないようで、何もかも悟ったようだった。



今まで響いていた鈍い音が、一瞬だけ途絶えた。


それは、嵐の前の静けさ。


たったの一瞬だけだった静寂。



私の足音と、誰かが息を呑む音と、誰かの心臓の音を、私の耳がすくいとった。



「逃げて……っ」



深月の持つ鉄パイプが、神雷の総長へと振り下ろされた。


神雷の総長は深月の攻撃をかわすのではなく、深月をぶん殴って対抗しようとしていて、逃げる気配はまったくない。



逃げてほしいのに、私の思いは届かない。


逃げるまで、降参するまで、深月は何度だって神雷の総長を狙って鉄パイプを振り回す。


そんな予感がするんだ。