「お前がさっき見ちまったことを、記憶から抹消してほしいだけだ」
相良深月の薄い黒の目が、私のざわつく心臓を鷲掴む。
地響きのようなドス黒くて低い声。
喉が苦しくなって、呼吸がうまくできない。
「だけど、それはできねぇから……」
相良深月はソファから立ち上がり、私の目の前に再びやって来て、私の顎をグイッと片手で持ち上げた。
間近で見る、相良深月の瞳の奥深く。
そこには夜の空よりも濃い闇しかなく、光なんてどこにもなかった。
「秘密をバラされねぇように、俺達のそばに置いとかねぇとな」
脳裏を過ぎる、私が意識を失う前に見てしまった光景。
たった一人の男を、三人でいじめていたあの場面。
この人達は、正義なんて言葉が全く似合わないあの暴力事件を無かったことにしようとしているんだ。



