「僕がまだ物心つく前に、親が育児を放棄して、孤児院の前に僕を捨てたんだ~」


「え……」


「まあ、そのことは別に気にしてないし、どうでもいいんだけどね~」



律は本当に気にしてなさそうで、平然としていた。


足を組んだ律が、話はこれからだよ、と言いたげにうっすらと笑った。



「小学校高学年だった頃、学校帰りに、ある女に声をかけられたんだ~」


「ある女?」


「そいつは、僕に『あなたの姉です』って言ったんだ~」



律のお姉さん?


家族が、律に会いに来たってこと?



「当時の僕って単純でさ~、大学生くらいの女にそう言われて信じちゃったんだよね」



いつもの無気力な口調なのに、いつもより切なく聞こえる。



「言われるがまま、女について行って、二週間くらい一人暮らししてた女の家で過ごしてたんだ~」