不思議と、昨日のような息苦しさはなかった。
ただ、一秒一秒が重くて長かった。
「僕の負けかな~」
「え?」
いきなりため息混じりにそんなことを言った律に、私は思わず声を漏らした。
負けって、どういうこと?
「羽留の言う通り、僕ね、女が大嫌いなんだ」
昨日は肯定も否定もしなかったのに、どうして言う気になったの?
律はチョコプリンを食べながら続けて言う。
「最初はごまかそうと思ったんだけど、羽留にはぜーんぶバレてるっぽいから言っちゃった」
微笑む律の目はやっぱり笑ってなんかなくて。
怖いけど、それ以上に律のことを知りたくなった。
そう思う私はきっと、既に律の殺気に含まれた毒で、平常心を殺られてしまっているんだ。



