私に触れていた手を下ろした律は、
「ねぇ、羽留」
と、小さく私の名前を呼んだ。
律の猫のような目が揺れているように見えるのは、気のせい?
「質問です」
「な、何?」
「僕は、捨てられる前に捨てる派なんだけど、」
間延びした喋り方じゃない律に、ドク、と心臓が皮膚を突き破る勢いで跳ねた。
不思議な雰囲気が漂う律が、何を考えているか全くわからなくて、謎めいていて、ちょっと危険だ。
スルリ、と私の左手を捕まえた律の大きな手。
触れた部分が、熱く火照っていく。
「羽留はどう?」
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…