私に触れていた手を下ろした律は、



「ねぇ、羽留」



と、小さく私の名前を呼んだ。


律の猫のような目が揺れているように見えるのは、気のせい?



「質問です」


「な、何?」


「僕は、捨てられる前に捨てる派なんだけど、」



間延びした喋り方じゃない律に、ドク、と心臓が皮膚を突き破る勢いで跳ねた。


不思議な雰囲気が漂う律が、何を考えているか全くわからなくて、謎めいていて、ちょっと危険だ。



スルリ、と私の左手を捕まえた律の大きな手。


触れた部分が、熱く火照っていく。




「羽留はどう?」