気づけば、繁華街の奥の方まで来ていた。
律が足を止めたのは、ビルとビルの間の路地。
「ここまで逃げれば、追いつかれることはないね~」
肩で呼吸をする私とは違い、律の息は全く乱れていなかった。
さすがというか、何というか。
私の体力が無さすぎるのも、関係あるのかもしれないけど。
「迷惑かけてごめんね、羽留」
本当にそう思ってるなら、もっと真剣な顔で言ってよ。
絶対謝る気ゼロでしょ、ってくらい締りのない律の顔。
「あ、あのさ」
息が整ってきたところで、私は口を開いた。
「ひとつ、聞いてもいい?」
「いいよ~」
律は相変わらずのゆるい口調で返事をする。



