「そういうわけだから、二人は帰っていいよ~」
私のことをギュゥと強く抱きしめた律は、ニコッとまがいものの笑顔を見せた。
もちろん、そんなことを言われて、黒髪の女とブロンドの女が黙って帰るはずもなく。
「何それ!あたしをバカにしてんの!?」
「そんなの納得できるわけないじゃん!!」
怒鳴り声を上げる二人の女を相手にせず、律は私の手引っ張って走り出した。
今日は、手を引っ張られることが多いなぁ……。
なんて、悠長に思いながら、足を動かす。
「律、待って!!」
「まだ話は終わってないんだから、逃げないで!」
背中をグサグサ刺している、二人の女の嫉妬と怒りを気に留めず、走り続ける律。
後ろから、二人の女が追いかけてきている。
だが、女はどちらもヒールを履いていて、どんどん距離が開いていった。
走っている間ずっと、律はうまく作られた笑顔を浮かべていた。



