俺の真正面にいる羽留は、さっきまで怯えていたくせに、今は穏やかな表情で俺を見つめていた。




「自分のためにしていることだとしても、家族を思っていることには変わりないもん」


「……!」


「私は、家族思いで優しいと思うよ」




不良になって、初めて言われた。


黒龍の人間を優しい、なんて言うのは、この世でお前だけだと思うぞ。



「お前って、変な奴だな」



つい、笑ってしまった。



羽留が秘密をバラす人間ではないことを示すために、嘘を言う人間とは到底思えない。


今までそんなことを言ってこなかったし、ずっと怖がっていたからな。



でも、そんな羽留が言ったからこそ、嘘でも冗談でもない本心だと、受け止められる。



「司、今笑った……?」


「それがどうした?」



俺だって人間なのだから、たまには笑うに決まってるだろう。




「司の笑顔、初めて見た……」