「家族のために、黒龍を抜けるなんて……」
「違うっ」
俺は羽留の言葉を遮って、声を上げる。
家族のためなんかじゃ、ない。
じいちゃんとの約束というのもあるけれど、一番は、
「自分のためだ」
心に傷を負いたくなくて、俺のせいで亀裂が入る瞬間をもう二度と見たくなくて。
……きっと、俺は怖いんだ。
約束を破ることが、心に新しい傷ができるのが。
「やっぱり、優しいよ」
それでも、羽留が意見を変えることはなく。
俺に教えるように、もう一度はっきりと伝えた。
どうして、そんなことが言えるんだ。
俺を、俺達を、ずっと怖いと思っていたはずだろう?



