元大学教授の祖父……じいちゃんと、高校教師の母と、弁護士の父。


そんな職業の人ばかりの西篠家は、とても厳しかった。


幼い頃から、両親に将来を期待され、その分厳しくしつけられた。



そのことを窮屈だと感じてはいたが、決して嫌ではなかった。


こんな日々がずっと続いていき、いつか俺も両親のような仕事をするんだと思っていた。




――しかし、いつも正しく真面目に過ごしていた俺の運命が狂った、最低最悪な日。


俺はその日、残酷な現実があることを知った。




その日家に帰ると、両親は俺を信じてはくれず、『お前の教育が悪かったせいだ』『司があんなことをしてしまったのは、あなたのせい』と互いに大声を出して、責任を押し付け合っていたのをよく覚えている。



結果、二人は離婚を選んだ。


両親が離婚届を提出した日、夏休みの一日だけは絶対に俺と会う、なんてことを両親が勝手に決めた。



俺は、別に会わなくてもよかった。


両親が俺を捨てることには、変わらないのだから。


きっと両親は、俺に会うことで親としての役目を果たしていると勘違いしているんだ。