そして、羽留に視線を戻して、
「本当に、辞めるんだ」
と、喉からこぼれ落ちたような声で言った。
黒龍を、不良を、この世界の住人を。
俺を包む“悪”を剥ぎ取って、どこにでもいる男子高校生に戻る。
「明日だけ、だけどな」
「え?」
正確に言うと、俺が明日ここを出て、明後日こっちに戻ってくるまで。
たった一瞬だけ、辞めるんだ。
「家族は不良を毛嫌いしてるんだ。だから、家族が集まる日だけは不良を辞めなければいけないんだ」
「集まるってどういう……?」
「俺の親は離婚していて、夏休みの一日だけ家族が集まることになっている」
俺と深月が不良になった“原因”のせいで、あっけなく離婚した両親は、どちらも俺を拒んだ。
俺を受け入れてくれたのは、母方の祖父だった。



