とある売人は、栗色の髪をさらりと揺らして、堪えきれなくなったように笑みをこぼした。




取引が成立したこととは全く関係なさそうな、何かを企むその笑みに


“例の物”を手にした黒龍の下っ端は、恐怖を感じた。




とある売人の右耳についているドクロのピアスがギラリと光ると、



「それじゃあ、また欲しくなったらいつでも呼んでくれ」



と一言言うと、闇に紛れて姿を消した。





静かに、ひっそりと、黒龍に魔の手が迫っていることも


いずれ、魔の手によって新たな闘いの幕が上がることも



深月も司も律も、もちろん私も、知る由はない。