危険地帯






「羽留を人質にしたセンパイに、僕らは正義のヒーローになって羽留を助けようと立ち向かうっていうルート」



私を人質に……?


もしかしたらあったかもしれないそのルートを想像しただけで、血の気が引いた。


律は楽しそうな表情で、「でもね」と続けて話す。




「僕らは正義のヒーローになんてものにはなりたくないから、助ける振りをするだけ」


「……っ」


「センパイが“僕達が羽留を助けに来る”って信じ込んだところで、大笑い」




それって、私を見殺しにするってこと?


目を丸くして顔を青くする私を見て、律は喉をクッと鳴らした。



「どう~?面白いでしょ?」



律は確かに笑っているのに、グレーの瞳は笑っていなくて。


律の歪んだ心を見ているようだった。



「もしこっちのルートだったら、羽留は今頃どうなっていたんだろうね」



悪魔の囁きが私の耳の奥で叫び声に変わって、私の脳内で警告音がジリジリと響き渡っていた。