龍司という人が振り下ろした鉄パイプは、ビュッと風を吹かせながら、深月との距離を縮めていく。



私にはなぜか、その場面がスローモーションのように見えて。


それはたった一瞬のことだったのに、とても長く感じた。



ガンッ、といやに鈍い音が耳を突き刺した。



鉄パイプが、深月に当たってしまったんだ。


バタン……と地面に倒れ込んだ深月を見て、龍司という人は大きく笑った。



――だが。



「はははっ!これで俺はまた黒龍に……」


「あっはははは!!」



龍司という人以外にもう一人、お腹を抱えて笑っている人がいた。


誰もが驚き、その人物に目を向ける。



「……え?」


「あははっ!ひー、ウケる~」



龍司という人は笑い声がした方へと顔を向けると。


そこにいたのは、大笑いしている律だった。