「博は私にとってお兄ちゃんみたいな感じかな」



メレンゲを角が立つくらい泡立てた雫さんは、私に笑みを見せながら言った。


なんか、わかる気がする。


私にとっても、博さんはお兄ちゃんみたいな存在。


いつでも、どこにいても、私を正しい方向へと導いてくれる人だから。




「実はね、私、家族がいなくて」


「え……?」


「独りだった私を助けてくれたのが博なの」




その時のことを思い出すように目を伏せながらそう言った雫さんの表情は、とても穏やかなものだった。



「どうしてその話を私に……?」


「うーん、わかんない。どうしてだろう。なんかね、話したくなっちゃったの。不思議ね」



ふふっと上品に笑った雫さんの強さを目のあたりにしてるみたいだった。


雫さんの話はとても暗いものだったのに、全然そんな感じはしなかった。