「この世に、本当に怖い人なんていないよ」
「え?」
「羽留ちゃんは、一緒にいる人達のほんの一部分しか見てないんだよ」
「一部分……?」
「そう。もっとその人達を見て、感じて、知っていけば、本当はどんな人なのかわかるはずだよ」
私の泣き虫な心を抱きしめるような、博さんの声。
黒龍の一部分しか、私は知らない?
私は彼らの冷たさにしか、触れたことはない。
だけど、もし彼らにも優しさがあるとしたら……。
「逃げずに、真正面から向き合ってごらん」
博さんは柔らかく微笑みながら言った。
何もできない、私は弱い、そう決め付けていたのは私自身。
黒龍の暴力的な部分だけを見るのではなく、本心を見つめなくちゃいけないんだ。
私を知ってもらうために、私が彼らを知るために。