驚いて振り返ると、渉が追いかけてきているのが目に入った。 勢いよく駆けてきた彼は、すぐに私に追いついた。 「何してんのよ。彼女はどうしたのよ」 「あぁ、置いてきた」 彼は、あっけらかんとした様子で言い放った。 「はぁ?何考えてんのよ、あなた」 「いや、なんか、お姉さんのことが気になって。そしたら、勝手に追いかけてきちゃってて。まぁいいや、とにかく送るよ」 そう言って、渉は、私の左手を握り、歩き出そうとする。