「俺は1人でも大丈夫だよ。‥1人には慣れてるから‥。‥花音が別れたくないなら、俺はずっと花音の帰り待ってるよ。‥だって、俺の目には花音しか写っていないから。」



「千明くん‥‥‥。」


千明くんは私の涙を指ですくいながら言った。


「だから花音、気にせずに留学してほしい。俺は首を長くして待ってるから。」


「うん。ありがとう。ありがとう!千明くん!私も‥千明くん以外の人は好きにならないから。」


「外国に行くと、俺よりもイケメンがいるからなー。花音がひっかからないか心配だ‥。」

千明くんが、冗談を言った。

「イケメン‥て。自分で言わないでよ!」

私は笑ってしまった。

「そうそう。やっぱ、花音には笑顔が似合うよ。」


「あ‥ありがとう。」


私は千明くんに言われて照れた。


「花音。何かひいてくれない?」

突然、千明くんがそんなことを言った。

「カノン、聞きたいなー。お願い!」

私の前で手を合わせてお願いする千明くんの姿が可愛らしく思えた。

「えー、仕方ないなー。」

私はそう言いながら、ひこうとした。

‥が、まだ言ってない大切なことを思い出した。


「‥ねぇ、千明くん。どうして私がピアニストになりたいと思ったと思う?」

私はそんなことを聞いてみた。


「えっ‥分からない。どうして?」

千明くんは分からないようだった。


「それはね‥私の演奏を聞いて千明くんが喜んでくれたから。‥だから‥私は千明くんみたいに世界中の人を喜ばしてあげたいて思えたんだ。‥大切な人にはずっと、笑っててほしいから。」


そう言って、私はカノンをひきはじめた。


「‥‥ッ‥‥‥」



千明くんは‥泣いていた。

千明くんの目からは涙がこぼれ落ちていた。


私はこの日、初めて千明くんの涙を見た。


私‥この音楽室でのこと忘れないよ。絶対に。