「樹生くん‥。」

私は樹生くんの気持ちを初めて知った。

「‥花音が結からどこまで聞いたのかは知らないけど、部活に専念したかったのは本当だよ。」

これまた、驚きの言葉だった。

「‥強くなりたいんだ、俺。強くなったところを結に見てもらいたい。結のこと好きだから守りたいんだ。」

樹生くんがそこまで言った時だった。




「何、かっこつけてるのよ!!!」


その声に私と樹生くんが振り向くと、そこには先に行ったはずの結ちゃんがいた。

「結!」

「結ちゃん!」


私と樹生くんは同時に声をあげていた。


「結ちゃん‥戻ったんじゃ‥。」

私は結ちゃんに声をかけた。

「花音がなかなか戻ってこないから、見に来たの。そしたら‥」


そう言うと結ちゃんは樹生くんの前まで行った。

「ゆ‥結‥、どこから聞いてたんだよ‥。」

樹生くんは動揺しまくりだった。


「あんたが、好きだ!て言ったところから。」

すると樹生くんは顔を赤くした。

「そこからかよ‥。」


「‥あんたはバカだよ。バカすぎる!!」


結ちゃんの顔を見ると目には涙がたまっていた。

結ちゃんの目にはもう樹生くんしか写っていないようだった。

私はお邪魔虫のはずなのに、なぜかその場所から立ち去ることができなかった。

私も私で何か大切なものを得られる気がした。


「私は‥樹生のそばにいられるだけでいいの!私が好きになった人は樹生だけで、樹生以外の人なんて考えたことないよ!私の目の前にはいつも樹生だけだったよ!」

結ちゃんの目からは涙がこぼれ落ちていた。

「結‥。」

「全部‥全部が好きなの私は‥。守れるようにて、さっき樹生は言ったけど‥私、十分守られてるよ樹生に。私が困ってるときいつも助けてくれた‥。樹生はもう私のヒーローなの。‥私は‥何度‥ふられても告白するて決めたから。」



結ちゃんは自分がどれだけ樹生くんのことを想っているのか、それを伝えようとしていた。


そして樹生くんも結ちゃんの想いを聞いて何かを決心したようだった。


「‥結‥。‥つらい思いさせてごめん。それと‥ありがとう。‥好きだて言ってくれて。‥俺も結のこと好きだよ。中学の時からずっと。今も好き。‥俺、結のこと、また泣かせちゃうかもしれないよ?‥それでもいい?」


樹生くんの手は震えていた。


そんな手を結ちゃんは笑いながら両手で包み込んだ。


「さっきも言ったじゃん。私は樹生のこと全部好きだから。‥だから‥樹生に泣かされても平気‥。樹生が辛いときは不安な時は私がそばにいるからね‥。」


結ちゃんがそう言うと樹生くんは結ちゃんを抱きしめた。


「‥‥ありがとう‥結。‥これからもよろしくな‥。」


樹生くんの声もまた、少し震えていた。

「うん!!」


結ちゃんは嬉しそうだった。




私も心の中がほっこりした。

大事な友達の恋が叶った瞬間だった。