手で口元を押さえながら、欠伸を噛み殺す。
意味もなく、目元を覆うように両腕を枕にしながら机に倒れる。
あぁ、そろそろ。
「おはよう、和ちゃん。
目覚めの良い朝ですね、眠たいの?」
いつもの調子で話しかけてきた、望月 佳織(モチヅキ カオリ)。
普段はちゃん付けなんてしないのに、朝はふざけてそう呼ぶ。
「おはよう、佳織ちゃん。
そうだね、少しだけ眠たいかな」
...勿論、私もだけど。
体制を起こして声の方に向き直れば、珍しく髪に手を伸ばされた。
「ボッサボサ。
ノドカの周りは、風速が違うのかな」
ふざけてるのは分かるけれど、
異世界に住んでる訳じゃないしあなた達と一緒よ。
「寝癖は直せたけど、風が吹いたら絡まるの。
佳織は相変わらずだね、上手」
綺麗にサイドでアレンジされていて、一本結びのヘアスタイルの佳織。
丁寧にヘアゴムまで隠されている。
器用だなっていつも思うけど、決して出来無いんじゃない。
ヘアスタイルの為に早起きしようとは思わないだけ。
「アレンジしてあげようか?時間まだあるし」
「おー。助かる、頼んだ。
ポーチおいてきちゃったんだよね」
そんな私の事を良く分かっている佳織は、こうしてたまに整えてくれる。
(そして、私より上手)


