教室に足を踏みに入れれば、クラスメイトに挨拶しながら真っ直ぐ席に向かう。
ヘアアレンジをお願いする立場で、待たせる訳にいかない。
来るのが遅ければ当然、時間も減るわけで。
急がせるのは悪いし自分が急ぐ。
「ノドカ、そろそろいいかな?」
ちょうど、ペンケースを机にしまい終わった頃だった。
ポーチを片手に佳織が立っていた。
「うん、お願いします。
ごめんね、いっつも頼んじゃって」
「別にいいよ、結ぶの好きだし。
練習にもなるしね、それに楽しいから」
髪を梳かしながら言う佳織は、気にするなと言うようだった。
出来なくは無いけど不器用だから、すぐに崩れて解いてしまう。
佳織が見兼ねて手直ししてくれて、
そのままズルズルと現在も結んでもらっている。
「簡単でいい?」
「えっと、おまかせします」
昨日の鍵のことは言っていない。
佳織を誘って、お店とか見て回るのも良いなって思っていたけれど。
(買わなくても見るだけでも楽しいし)
でも佳織は部活に入っているから、無理だと気づいて言いかけてやめた。
部活が休みの日ならまだしも、活動日だったから。
無理だと分かっていて、わざわざ自分の失態を晒す必要もないかなって。


