バン‼という大きな音と共に、玄関の扉が閉まった。


息苦しい。胸も苦しい。

泣きたくないのに……



リビングからは、お母さんとお兄ちゃんの声がする。


泣き止まなきゃ……。


私が泣いたなんて知ったら、お母さん心配性だから慌てちゃう。

お兄ちゃんにもバカにされる。


だから、泣き止まなきゃ。





「桜綾か?」



ガチャ、と廊下の奥のドアが開く。

こっちに来る‼


私は制服の袖で何度も目を擦った。



「た、ただいま‼」


「やっぱお前か。扉が開いた音がしたからきてみたら、何玄関で突っ立ってんだよ」



腰に手を当てて細い目で見るお兄ちゃん。


よかった……気づかれてない。



「ゴメンゴメン‼制服汚れてたから払ってただけ――」


靴を脱いでお兄ちゃんの隣を通り過ぎようとした時、腕を掴まれた。


引っ張られた勢いで、お兄ちゃんの方へ体が向く。





「……何があった?」