初めて失いたくないと思った人

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体育館へ行き、ない忘れ物を取りに行きそして、部室へ戻るともう先輩達は、帰っていったようで私たちが最後だった。


「早めに、着替えよ」

「うん!」


そして、着替え終わり私達は部室を出て鍵を返し急いで学校を出た。


☆☆☆
外は、もう真っ暗のようで街灯の光も少し頼りなく光っている道を2人で歩く。


「「…………」」

私達、2人は無言のままずっと歩いている。


学校を出てからというもの、2人の間に気まずい雰囲気が確かに私たちの周りを覆っていた。


「……あ、あのさ」


「?」

最初に、口を開いたのはさっきまで重苦しい顔をしていた茅里だった。

「……空藍は、凄く頑張ってて!かっこよくて!影では、後輩にすっごく憧れ持ってる人たくさんいるんだから!!何も分かってない奴らに空藍の事好き嫌い言われたくないよ!!!」

「ちょっ……近所迷惑だよ……もっと、静かにしてよ…何急に」

急に、大声で私は凄いんだよ!!と言われても困るし近所迷惑でもある。

今は、もう夜に等しいくらいの時間だ。
めんどくさいことに巻き込まれたくない……と思ったが、現にさっき知らないおばさんに「うるさいわね」と顔を顰めながら通り過ぎってたのは、私しか知らないだろう……


だって、隣ではまだ周りを気にもせず叫んでる奴がいるんだから…


「……ハァハァ、だって!空藍は、こんなにも優しいのに!!ただ!ただ!!!」



「…もういいよ、分かったから」



「けど!!!」



(優しいのは、茅里だよ……)



「……私は、茅里がいるだけで充分だよ」



「えっ…」



「……いつも、ありがとね」




「……あっ…っ」




「ちょっ…泣かないでよ」



「な、泣いてないよ!」



「…あっそ」


グズグズと、茅里は泣いているが私は気にせずそっぽを向き体育館の外へ出ていった。

茅里には、落ち着いてからでいいと言ってから出ていったので今頃泣き崩れているのではないかな?と予想しながら外を見あげた。


初めてだった。


あんなにも、素直に自分の気持ちを声に出していったのは…いつも、言わないか、誤魔化すために、棘のある言葉を吐くかの、どちらかだったから…だから、今凄く恥ずかしいという気持ちと、何とも言えない気持ちが混ざりあっている。


それが、外の暖かく少しジメジメした気温で、少しは緩和…どころか、暑いな…

「はぁ…夏の大会……もうすぐだな…」

大会は、少し遠い瑞浪市高校(みずなみこうこう)で、行われる。


前は、遠いがまだ近かった早見高校(はやみこうこう)で行われたので今回行くところは、初めてだからどんな所か、検討もつかない。


「……少し楽しみ」ボソリ


「ん?なんか言った?」


「ううん、なんも〜」


私は、茅里には分からないようにもう1度ボソリとありがとうと言った。


初めて、私は少しだけ心を開いた。






















もう、あと数週間で大会が始まる。
その時、まだ空藍は知らない。
大会で、空藍の今までの全てがガラッと変わってしまうことを……そして、空藍の境界線に入ってこようとする人物が現れることを……



今はまだ、その存在を知る由もなかった。