「………はぁっ!」



そして私は何故かベッドの上にいた。

いつの間にか外は明るくなっていて、アーラの姿もこつ然と消えていた。



「え?なんで……?まさかこれって夢だったとか?」



そうだったら良かったのに。

全開になっている窓と、手元に落ちていた一枚の黒い羽根。

それらがこれは夢では無かったと、証明してくれているようだった。



そういえば……。

次は私がアーラを楽しませる番なのか。

何か考えておかなくちゃ。



「奏ーっ?起きてるの?」

「うんーっ!今降りるーっ!」



アーラが放り投げたまま放置されていた漫画を戻し、階段を駆け下りた。



ぼんやりと昨夜のことを思い出しながら、いつもよりゆっくり通学路を歩いた。



「ちょっ!奏!」



靴箱で下履きに履き替えていると、いきなり紗千に肩を叩かれた。



「わっ、びっくりした!何っ?」



もう毎度毎度……背後からいきなり声を掛けてくるのは辞めてって言ってるのにぃ!



手から滑り落ちたローファーを拾い上げ、振り返ると紗千が目を真ん丸くさせていた。