「うわ……男子達。またやってる」



隣を歩いている、クラスメートの紗千がぼそりと呟いた。

彼女の視線の先には、両手にスクールバッグを六つも持たされている男子生徒がいた。



「ね……かわいそうだよね」



それは誰の目から見ても分かるイジメ。

しかもイジメられている男子生徒は、私の幼馴染でありクラスメートでもある。



「ちょっと……これはさすがに重たいよ」



黒縁メガネがしっくりくる、華奢な体型の彼は次咲将太(つぎさきしょうた)だ。

その変なメガネのせいか、ヒョロガリな体型のせいか、はたまた個性的なキノコヘアのせいかは分からないけど……昔からよくイジメられている。



だからこの光景は、今や日常茶飯事になっている。



「あっ、この前さぁ……」

「うんうん、それ私も見たよっ」



だけど私も紗千も、止めに入るようなことはしない。



見てみぬふりをする、もうソレが暗黙のルールになっていた。

触らぬ神に祟りなし、なんて小声で言いながら素通りした。