「奏ちゃん!駄目だよ、行ったら駄目だ!」



今すぐにでもアーラを連れ戻したいのに。



「やだ!次咲くん離してよ!アーラがっ……アーラが殺されちゃうの!」



いつの間にか魔法陣を飛び出していた次咲くんが、行かせてくれなかった。

両腕を掴む手を振り解こうにも出来ない。



いくら華奢といえど、次咲くんだって男だ。

腕力で敵うはずもなく、泣き叫ぶことしかできなかった。



「奏ちゃん!あの穴に入ったらもう戻れなくなるんだよ!」

「いいの!だって次咲くんがまた、私を連れ戻してくれるんでしょ!助けなきゃ、助けなきゃ!」



空に開いた穴がだんだん小さくなって行く。

今ならまだ間に合うんだ。

近くにいけばきっと、私も吸い込まれるはず!



アーラの手を掴むことが出来るはず。



「何のために大悪魔様が、奏ちゃんの身代わりになったと思ってるんだ!」



次咲くんの言葉にハッとした。

その瞬間全身の力が抜け、ずるずると膝から崩れ落ちてしまった。



「大悪魔様なら大丈夫だよ。強い力を持った悪魔なんだから……そう簡単に殺される訳ないでしょ?」

「うん……。そうだね」



そうだよね……。

悪魔は不死身なんだって言ってた。



だったらきっと…魔界で生きてるよね?

いつかまた、会えるよね?