これまで紗千と作ってきた様々な思い出が駆け巡り、涙で前が見えなくなってきた。

ペンを走らせることも出来なくなって、声を殺して机に顔を伏せた。



「随分と夜更ししてんなぁと思ったら…。何をしている?何でいきなり泣くんだよ?」

「だって…みんなにもう会えないんだもん」



アーラは人間の別れを惜しむ感情が、理解出来ないような表情だった。

疑問に首を傾げながら、何やら難しそうに眉を潜めていた。



テーブルランプに照らされる手紙に背を向けると、涙を拭いて立ち上がった。



そしてベッドに座るアーラの前に立つと、

「大丈夫、ちゃんとお別れするから」

再び溢れ出しそうな涙を堪え、無理矢理に笑顔を作った。



「アーラも、今までありがとう。私をここまで生かしておいてくれて」

「……礼なんていらねぇ、やめろ」

「そして、これからもよろしくね。魔界のことたくさん教えてね」



アーラは返事すらせず、顔をそっぽに向けると再び寝転がってしまった。