「付き合ってないよ」



首を横に振りながら強く否定すると、垣内くんは間髪入れずに聞き返してきた。



「じゃあ黒羽と付き合ってんの?」

「えっ?」



そう言われれば……そうなのかなぁ。

とは言ってもアーラは私を好きだとか、そんな感情は無いのだろうけど。



「そう……なるのかなぁ一応?」




屋上で付き合おうって言われた時、恐怖に震えながら頷いたことを思い返した。

アーラがあの時見せた冷たい眼、感情の篭っていない声。



『断ったら殺す』

そう耳元で囁かれた恐怖は、きっと一生忘れることが出来ない気がする。



「……アンタそれ本当だな?本当にアイツと付き合ってんだな?」

「う……うん?」

「ふーん、分かった。なるほど、そういうことねぇ」



やだ……なんか垣内くんの顔が怖いよぉ。



「あの……どうしたの?」



垣内くんは質問に答えることもせず、低く舌打ちをするとくるりと身を翻し、校門方面へ歩き出した。