「何もない……」



大木の付近をぐるりと一周してみても、本は落ちていなかった。



やっぱり……夢だった?

魔法陣も本も無いとくれば、そうとしか思えない。



「じゃあ、家で次咲くんの本を探さなきゃね……」



多分、寝ぼけてどこかに置いたんだろうな。



「奏?そんなとこで何やってんの?」

「あっ、紗千!」



びっくりした。

もう急に声を掛けないでよ〜、笑いながら肩をパシンと叩いた。



「ちょっと探し物!でももう見つけたから大丈夫!一緒に教室行こう?」

「そう?ならいいんだけど……」



うん、アレは絶対に夢だ。

もう全て忘れよう。



「あっ、そういえばさぁ。昨日彼氏がね……」



ほら、いつもと変わらない平凡な朝だ。