はぁぁ、もぅ。

いきなりぬっと現れるなんて、次咲くんってば相変わらず不気味だよ。

朝っぱらから驚かさないで欲しい……。



次咲くんはごめんごめんと笑いながら、私の歩調に合わせて隣を歩き始めた。



「あれ、奏ちゃん。なんだか顔が少し赤い?」

「えっ?!そんなこと無いよ!」

「いや、そんなことあるよ!どうしたの?大丈夫?熱でもある?」



額に向かって伸びてきた手を慌てて制止した。



「だ、大丈夫だから!心配しないで?ね?」

「え?あぁ……そう?」



次咲くんは本当に大丈夫?

なんてぶつぶつ言いながら、不満げな顔で伸ばした手を下げた。



だってアーラとキスしただなんて……絶対に言えないよ。

あんな恥ずかしいことを知られたくない。



あんな……押し倒されて、舌を絡めるようなディープなキスをされただなんて。



「……やっぱり顔が真っ赤だよ」

「違うってば!あっ、早く学校行かなきゃ遅刻しちゃう!」



恥ずかしさのあまり、逃げるように駆け出した。