正気ですか?

いや、聞くまでもなく正気じゃないよね?



「ねぇ……大丈夫?悪魔なんてそんなもの」



ただの想像上の生き物でしょう。

そう言いたかったのに、次咲くんの声でかき消されてしまった。



「悪魔は実在する。そして僕の力になってくれるって信じてるんだ」

次咲くんの瞳は真剣そのものだった。



嘘ぉ。

大して面白くもない冗談だと思ってたのに。

……正気で言っているんだ。



良かったらこれ、貸してあげるから見ていいよ。

そう言って分厚い本を差し出され、ついソレを受け取ってしまった。



「いや……次咲くん。これはさすがにいらないんだけど」

そもそも私は悪魔だなんていると思わないし、興味もない。

だからこんな本を見たいとも思わない。



「じゃあ今夜、日が変わる直前に校庭でそれを返してくれる?」

「え?困るよ……」



本を突き返そうかと思ったけど、次咲くんに手で遮られてしまった。



「じゃあね、奏ちゃん。君は幼馴染だから特別だよ」



なんて不気味な笑顔で、鳥肌の立つような言葉を残して姿を消した。