一年の夏休み

あの夏は五年経った今でも忘れられない









私は一人美術室で筆をキャンバスに乗せていた


「なんか面白味の無い絵だね。」

後ろから声がして驚いて振り返る
すると二階のはずのここの窓に座ってる男の人がいた。
おかしい、さっきまで居なかったはずなのになどと考える間も無く男の人は私の方へ近づき勝手にキャンバスに色を乗せた。

それは鮮やかで、その空間は自分のものにするくらいの艶があって芯があってあたたかい
何処かを描いているそれなのにそこに込められた思いが此方にひしひしと伝わって来る様な、そして何故か凄く懐かしい画


「何でこんな画描けるの?」
そう私が言うとふっと笑って私に筆を返した。
「これは君が昔描いた画の模写だよ。」

「私が、こんな画を?」


「そう、俺は君のファンだからね。」



そう言うと男の人はにこりと笑ってまた来るねと礼をして窓からひょいと外の木に移って校舎をでていった
その男の人の制服は私の通う高校とは違う制服で黒い学ランだった。


次の日も次の日も

私が一人の時彼は必ず美術室に訪れた。