送っていくと言ってくれた佐山くんだったけど、頭の中がごちゃごちゃしすぎて断ってしまった。
1人で帰れるよ…
なんて冷たかったかな
家で擦り膝をきちんと処置しながら少し後悔
ハンカチ……洗って返さなきゃ
「はぁ…」
モヤモヤする……。
自分で決めたことなのに、それに向き合えない中途半端な気持ちのせいで。
「佐山くんにもう一度謝らなきゃ」
スマホを手にとって、ホームを開くと通知が1通。
亜紀ちゃんか、それとも佐山くんだろうか。
そう思いアプリを開いたら大和さんのところに1という文字が。
……え
ついに目までおかしくなったのかと、こすって見たけれど、やはり間違いなく彼からだ。
「…ど、どうしたんだろう……えっと」
いろんなことを考えていたせいで、少しメッセを見るのが怖い。だけど嬉しい気持ちの方が強いせいでよくわからない感情に包まれた。
恐る恐る画面に触れると、トーク画面に。
”さっき姿を見かけた。転んだのか?”
さっき?
もしかして、やっぱりあの車は大和さんが乗っていたんじゃないだろうか。
声をかけて下されば良かったのに。
大和さんに会えればなって思ってんですよ。
久しぶりに大胆に転びました。
そんなことを送って見たけれど、すぐには既読は付かなくて……
やろうとしていたことも忘れ、ソッと机の上にスマホを置いた。
「…転んだところ見られてたんだ…」
恥ずかしい……あんなに情けない姿見られてたなんて。
そう思っていたら、今度は着信音が部屋中に響き渡った。
「え……」
まさかと固まってゆっくり手に取ると、大和さんの名前。
で、で、電話!!?
うそ、どうして!!?
アワアワと何故だか部屋中を見渡したけれど、覚悟を決めて電話に出る。
「は、はい」
『真子』
うわぁうわぁうわぁ
と心が何度も叫び出した。
落ち着いて私。ドキドキしてたら上手く話せないから。
「や、大和さん…びっくりしました。その…電話」
『……いや、ちょっと疲れたからお前の声が聞きたくて』
!!?
きっと何気無いセリフだったんだろう。
だけど私には効果絶大だ。
「わ、私も……聞きたかったです。大和さんの声……」
沈んだ気持ちが浮ついてくる。
これの繰り返しばかり。
『……やっぱり転んだんだな。膝大丈夫か?』
「は、はい。……いつも大和さんが受け止めてくれるから、血が出たの久しぶりで……というかがっつり見てたんですね……」
『……どんくせぇな。たまたまあそこ通ったら足を洗ってるお前がいて、多分転んだんだろなって』
「……ですよね。自分でも思います……。呼んでくれれば良かったのに…恥ずかしいじゃないですか。」
何故だかその言葉に彼が黙り込んでしまって会話が出てこない。
いきなり電話をかけてきた意図もわからないし。
私変なこと言ったかな……
『…いやだって…お前…さっき……』
「え…」
しかし意を決したように口を開いたのは大和さんだった。
『……いや、格好悪りぃから言うのやめる。』
だけどすぐにまた黙ってしまう。
……そんなこと言われたら気になっちゃう…

