佐山くんの言った”誰か”は考える必要もなかった。


「大和さんのこと!!?」


「あ、う、うん」


「ふふ…大和さんすごく優しいんだよ。クレープ好きみたいで、楽しそうにしてくれてた」



ついつい佐山くんの前で、彼のことを夢中になって話してしまう。また行きたい。大和さんと甘いものを食べに……


そんな私とは対照的に目の前にいる同級生は、少し不機嫌な顔をしていた。



「…い、いい感じなの?そいつと」


「いい感じ?…まぁ亜紀ちゃんくらいの親友になれればなって……」


「親友?恋人じゃなくて?」


恋人になれたらどれだけ毎日楽しいだろう。


手を繋いで、デートして……沢山ドキドキして。


だけどそんな日が来るはずなんてない。
来てはいけない。



「大和さんと付き合うことなんて…絶対ないよ。」


悲しい顔をしてしまえば心配するだろうと笑顔を作った。



ほら、また私傷付いた。期待している証拠……ダメだってわかってるのに。


ズキンと痛む胸を抑えている私とは裏腹に、佐山くんは笑顔


百面相??


「そ、そうか!安心したっ!いやぁ、良かった!」



しかも何故だか喜んでる……


「なにが良かったの?」


「いや、こっちの話だから気にすんなっ!ほらクレープ屋見えたぞ」


訳がわからない彼に思わず首を傾げてしまった。



だけど甘い香りに誘われて、憂鬱な気分をなんとか切り替える。



「うまそっ…俺抹茶にしよ」


「抹茶!?佐山くん渋いんだね」


「そう?笹本は??」



お店のメニュー看板を見ながら、今日は何にするべきかと考え込んだ。



この前はいちごだったから、バナナにしようかな……



でもイチゴも……



そこでふと大和さんと来た時のことが頭をよぎった



『欲しいんだったらどっちも買え』



あの時そう言ってくれた彼は、佐山くんのように自分の好きなものを選ばなかったよね。



……私の好きなものを頼んでくれた……



今になってそんなことに気づいた自分。
その時に気遣いを感じ取れなかったことを深く反省する。



「笹本?」


「あ、ご、ごめんね。私、買って来るから」



何をしてても大和さんの優しさを思い出す。



佐山くんと一緒にいても比べてしまう。



自分で付き合えないと言い聞かせても、辛くて悲しいと思ってしまう。



「……ダメだなぁ。私……」



ほらまた


大和さん今何してるんだろうって。


そんなことばかり考えてしまう頭が嫌だ。