まさか佐山くんに謝られると思ってなかったので、思わず固まってしまう。
「な、なんだよ…」
「いや、あ、謝ってくれるんだって…」
「う、うるさいっ!!」
耳まで真っ赤だ……
もしかして照れ屋なんだろうか
と自分の中で彼のイメージが変わった。
「……佐山くんは大きいね。どうしたらそんなに背が伸びるの?」
「…バスケやってたから……あと遺伝?」
「そうなんだ。遺伝の方はなんとかなるのに…私もバスケしようかな」
ぽつりと溢した言葉に佐山くんは思い切り吹き出す。
「無理っ!絶対無理だからっ!笹本ギネス級にどんくさいもん」
悪気は無いんだろう……だけど1人でお腹を抱えている彼に私は顔を歪めた。
もしかしたら佐山くんはいい人かもしれないって思ったばっかりだったのにっ!!!私のこと馬鹿にしすぎだよっ!
「できるもんっ!!練習すれば!」
「…無理だって。運動神経ないじゃん」
「そ、それは否定できないけど……」
「入学式の時だっていきなり階段から降ってきたし。あんなの初めて見た」
「そ、それはっ!」
男の人とあまり会話をしないのに、佐山くんとは話す理由はここにある。
慌てていた私は亜紀ちゃんの忠告を聞かずによそ見をして、階段から落ちたのだ。そして彼の上にダイブ。
それだけで気まずいのに、同じクラスの後ろの席にその佐山くんがいたのだ。
そこから彼のちょっかいが始まったので、私はてっきり嫌われてるのだとばかり思っていた……重かっただろうし。
「…まさか…一目惚れするとはなぁ……」
わざと小さく呟いた佐山くんの言葉は、道路を走る車の音でかき消された。
どうしたのか聞くと、別に。と恥ずかしそうにそのまま進んでったので、そのセリフはわからぬまま。
……嫌われてはないのかな…多分
少し歩幅があいたので慌てて積めるために走る。
そのせいかついつい大和さんと歩いた時のことを思い出した。
歩幅があくと自然と遅くなる大和さんの足。
待ってくれる優しさが脳裏によぎって、つい顔が緩んでる。
「……さ、笹本」
「…え、あ、は、はいっ!」
しかし佐山くんに呼ばれたので、急いで戻した。
「……そういえば…クレープ屋……誰かとも行ってなかった?そのえっと……金本が言ってた…男と。」