銀次さんが部屋に入った瞬間

とても騒がしくなった気がした。


「うるせぇな。銀」

「そうよ。いいところだったのに。空気読みなさいよね」


不機嫌な姉弟に一瞬、うっと怯んだ彼だがそれでも大変なことを伝えるべくとずいっと前に来る。



「か、川本のお嬢が…こっちに来るらしいねん!!」


私だけ…なんのことなのか全くわからないけれど、大和さんの顔もすみれさんの顔も大きく歪んだ。




川本のお嬢……??


女の人かな??



「若が逃げてばっかりおるから……直接こっちにくるみたいや……」



アワアワと部屋の中を歩く銀次さんを横目に大和さんは、大きくため息。



「ちっ。面倒くせぇ」


そしてそれはすみれさんの方からも。



「私あの子大嫌いなのよね。京都弁振りかざして偉そうに……」


「お、俺なんか会うたび

あんたはいつみても関西人の負け組って顔してるなぁ

って!!! どんな顔やねんっ!!」



銀次さんも興奮した様子。



一体どういう人なんだろう…


「川本さんのお嬢さんっていうのは、大和さんのお友達か何かですか?」



恐る恐る聞いてみると


「この流れで友達って馬鹿か。お前は」


と小突かれてしまった。



「す、すみません。」


「……要件はわかったから出て行け。銀」


「え、でも若……どうするん?婚や」



銀次さんが何か言おうとしたけれど、それは2人の鋭い睨みに阻止される。



今夜??
今夜来るのかな……なら私はあんまり遅くまでは、迷惑だよね。




「ちっ。女は嫌いだ。ギャーギャーうるせぇうえに男より厄介なこと考えてやがるし。」


「……あら、真子ちゃんも女よ。」



女は嫌いだというワードにショックを受ける暇もなく、すみれさんが割って入った。




すると大和さんは、ジッと私を見た後ゆっくり口端を上げる。




「こいつは、いままでにいなかったタイプだし、別。」



心がなんとも言えない気持ちでいっぱいになった。



まるで特別だと言われているようで、天にも昇る心地。え、どうしましょう。嬉しい……




「…あ、ありがとうございます…」


「いや……ほら、勉強の続きするからお前らでてけ。」



銀次さんとすみれさんを彼が追い出して、また勉強タイムが始まった。




……ドキドキする。


こんなに勉強が楽しかったことはいままでにないかもしれない。



川本さんが誰だか少し気になるけど、もういいや……



大和さんに嫌われてはいないってことが、わかったんだもん。







その後の勉強は気持ちが悪いほどご機嫌に臨んだ。


テストは絶対いい点数を取るぞと自分とそして大和さんに誓ったのだった。