警察一家の娘恋した相手はヤクザの息子でした



いまこの状態でそんなことを聞けるわけなくて、私の名前を呼ぶすみれさんの方に集中する。



「ねぇ、真子ちゃん。真子ちゃんってお兄さんいる?」


いきなりの質問にきょとんと丸くなる目。



「はい…1人います…が…」


私の答えにどこか納得したような顔をした彼女は、すぐにニコリと笑顔に戻した。


「やっぱり!! 真子ちゃんの性格お兄ちゃんがいそうだものね!大和と相性いいわ!見て!」


一瞬、もしかしたらすみれさんは正道お兄ちゃんのことを知ってるんじゃないかと不安がよぎった。だけど手に持っていた雑誌を見せられて、占いのために聞いたんだということにホッとする。



「チッ。なんだよ。んなのどうでもいいだろ」



「あら、大和。何その態度。そんなに無愛想だったら、真子ちゃん他の男の子に取られちゃうわよ。」



「え!!?」


他の男の子…なんてそんなわけない!

そう思ってブンブンと首を振るけど



「まず、俺のもんじゃねぇだろ」


と当たり前なことをいう大和さんに冷静になった



そうだ……否定する前に、私は大和さんのものではないし、ましてや恋人になれる立場でもない。


そんな現実にまた心が虚しくなる。



「あら、そう? ならいいのね。大和は、真子ちゃんが他の男の子とキスしたりデートしたりしても」


後ろからギュッと私を抱きしめて、とんでもないことをいうすみれさんにどう反応していいかわからなくなった。





「真子ちゃんモテるでしょ。 こんなに小さくて可愛い子、男が放っておくわけないもの。どうする?大和。振られちゃうわよ」


「そ、そんな!」



私が大和さんをフるなんておこがましい。なんて慌てていると、彼はとても冷静な顔で


「どうでもいい。んなこと」


なんてぴしゃりと言い放つ。





”どうでもいい”
当たり前の言葉だ。
一体何を期待してたのか、自分が馬鹿みたい。




「そ、そうですよ…すみれさん…私と大和さんは友達なので」



それ以上を望んではいけないくせに。
何回自分で心に傷をつけるのか。


「……真子ちゃんこんな冷たい男ほっとけば?私が素敵な人紹介しましょうか?」


「えっと…それは…その」


ボキッ


そんな音に私はギョッとした。


大和さんの手の中にあった鉛筆が折れている。



「……」


その姿を見たすみれさんがニヤリと笑う。



「……真子ちゃん…学校には素敵な人いないの?」


「え、そんな、いません」


「彼氏ができても大和と遊んであげてね」



どうしてこんなことをいうんだろう……


わからないけどこの空気が良くないことは、馬鹿な私でも察した。大和さんがなんとなく怒ってる気がする……


すみれさんがおちょくるから嫌なのかな?



「……ねぇ大和本当にい」


彼女が再びなにか言いかけたと同時に


「た、大変やぁあああ!」


といまじゃ少し聞き慣れた気がする関西弁が。




銀次さんまで上がってきちゃった……