学校の真ん中を真っ直ぐと歩く彼の姿。太陽のせいなのか、キラキラと輝く金色の髪がなんだか綺麗だった。
亜紀ちゃんも呆然とその姿に魅入っている。
まさか…こんなにすぐに会えるなんて。
喜びのあまり声を失って、なんて話しかけるのが正解なのかと探し出す。
だけど……少しだけ彼のことで違和感を覚えた。
みんな……避けてる?
おかしいと思うがそう感じたのには理由が。
まず前に歩いている人たちが、後ろに彼の気配を感じると、不自然なくらいすぐに横に逸れるのだ。まるで遠慮して道を開けてるみたいに。
それともう1つ。誰1人、目を合わさないし挨拶すらない。
一匹狼なのかと思ったけれど、どこかピリッとした空気にそんな言葉で片付けていいのかと思い始めた。
……なんだか少しだけ……寂しそう。
決して彼が悲しい顔をしたわけではないけれど、なんとなくそう感じてしまったんだ。仕方ない。
どうみても周りの方が、彼に気を使ってる。
一体どうしてなんだろうか……
そう考えて真っ直ぐ見つめているとクイッと腕を引っ張られ、そのまま端の方に連れて行かれた。
「あ、亜紀ちゃん…」
「もう。何してるの。見過ぎ!!」
「だ、だって……」
足が長いからなのか、もう私達の前を通過した昨日の男性はやはり誰とも話さないまま歩いて行ってしまう。
「もう……話しかけるタイミング失ったね……ってあれ?真子?」
「行くよ!亜紀ちゃん!」
「え、あ、は、はい」
思わず彼の背中を追いかけだした私に、彼女は慌てて付いてきた。
気になる……どんな人なのか……
名前だって…知りたいことは山ほどあるのに。
一定の距離を置きながらひたすら追いかける。
やってることがストーカーみたいで、思わず心の中で家族に謝った。
……お父さんが知ったら絶対怒るよ。
だけどごめんなさい。
どうしても彼とお近づきになりたい。
そんな思いでひたすら真っ直ぐと突き進んでいく。
昨日と同じ路線の電車、念のため昨日彼が降りた駅の切符を買ったけど、これまた予想が当たってやっぱりあの人はそこで降りた。
思わず亜紀ちゃんとハイタッチしてしまったじゃないか。
「今日の真子……俊敏ね。別人みたい」
「だって…置いて行かれたら困るもん」
コソコソと2人で更に後をつけ、駅から15分ほど歩いたら大きなお屋敷が目に映った。
その家の玄関前には大きな黒塗りのベンツ。
「うわぁ……なんだか……」
亜紀ちゃんが何か言おうとした刹那
バンッ!と大きな音がしたかとおもうと、車の中からスーツを着た厳ついオールバックのお兄さんが出てきた。
そしてなんの迷いもなくあの彼に頭を下げたのだ。
「あ、おかえりなさい。若」
……若?