「あ、ほ、本当ですか?」
「嘘言ってどうすんだ。」
「……嬉しい…ですっ。」
自分がドンドン欲張りになっていることに気がついた。
友達で良いなんてただの強がりで、大和さんに触れられるとドキドキするし、もっと触れて欲しいなんて思う。
いつだって心の中に大和さんがいて、他の人と比べて、知れば知るほど好きになって、後戻りできなくなっている。
でもこの気持ちを口に出してしまえば、沢山の人に迷惑がかかる。だから私はいつだって誤魔化す方法を探してる。矛盾していることばかり。
警察官の娘だと、彼に知られた途端
こんな風に笑いかけてくれることも
こんな風に意地悪されることも
こんな風に勉強を教えてもらうこともできなくなるのかな。
ギュッと握ったスカートがしわになった。
「…真子……どうかしたか?」
いきなり黙り込んだ私を変に思ったのか、大和さんが名前を呼ぶ。
「あ、は、はい。えっと」
「勉強のしすぎで疲れたか?……顔が暗いな……」
まっすぐ私を見つめる大和さんにどうしようもなく胸が苦しくなった。
……騙しているのと同じだ。
なのに、言いたくない。
この関係を失うことも怖い。
そんな私はずるい。
「そうですね……少し疲れました……」
力なく笑うと、大和さんはふと真面目な顔をする。
嘘をつくのは苦手だから、何か悟られたんじゃないだろうか。そんな不安が少しよぎった。
「良い点数を取ったら、お前から何かもらおうと思ったけど、やめとく。」
「え」
「……頑張るのはお前なんだから、どこでも好きな場所連れてってやるよ。」
……どうして大和さんは、すぐに私の心をすくい上げてくれるんだろう。
落ち込みそうになっていたのに、すぐに復活する私が現金すぎるのかな。
「ご褒美…くれるんですか?」
「…ああ」
「あ、でも私もお礼を…」
「いい…お礼はその後で。」
ぱぁああと一気に表情が変わったことに、自分でも気がついた。
「た、たくさんあります…どこがいいかな…水族館とか動物園とかそれに……映画も…」
「気が早いやつだな……行きたいなら勉強頑張れよ」
「あ、は、はい。頑張ります。大和さんといきたいところがありすぎて……1つに絞れるかな……」
ポツリとそうこぼすと、ブハッと笑った大和さんが
「……全部連れてってやるから安心しろ」
なんて言う。
胸がキュンキュンと音を立てて、俄然やる気が湧いてきた。いつもはやらないけれど、今日は絶対復習頑張ろう。

