「か、かわ、可愛いって……こういう格好が好きなんですかっ!?」
「馬鹿か。んなわけねぇだろ」
ポカッと軽く頭を小突かれて いたたた とそこを撫でる。びっくりした…大和さんが好きならこの格好を頑張ろうと思ってしまった自分が恐ろしいよ。
「……なんかわかんねぇけど、可愛いって思ったんだよ」
少しだけ照れたように、そういった彼に頬の熱が治らない。
「あ、で、でも、私なんかより、大和さんのお姉さんの方が可愛いというか…いや綺麗?かな。すみれさんに憧れます……大人の女性……」
素直に嬉しいというのも恥ずかしくて、自分の心の中にある憧れを大和さんに話してしまった。すると顔を歪めた彼は、すみれさんに被せられている私のウィッグをスルリと取る。
「お前は……このままでいい」
そしてソッと呟いた。
「え……」
ドキンと心臓が大きく音を立てる。このままっていうのは、どういう意味だろう……ドジで迷惑ばかりかけているのに、それでもこのままでいいと言ってくれるんだろうか。
「……俺はいまのままのお前が気に入ってる……」
「!?」
そんな考えを見透かしたのか、欲しい言葉がそのまま降ってきて心臓が壊れてしまうんじゃないかと思うくらい、大きく脈打つ。
「あ、え、う、嬉しいです。わ、私もそのままの大和さんを気に入ってます……」
「そうか…」
ほら、今日一番のとびきりの笑顔が向けられてしまった。
またこれで私は、大和さんへの気持ちが大きくなる。
目も合わせられないほど、恥ずかしくて、1メートル程の距離なのにそばにいるだけでドキドキ。
ぼーっとまた見惚れていると、階段を駆け上ってくるような音が聞こえて我に返った。
「お、ま、た、せー!!!」
バンッ!!
勢いよく開いたドアに思わず固まる。
「あら、邪魔しちゃった?」
いたずらっぽく微笑むすみれさんに、私はブンブンと首を振った。
「いえ、そ、そんな!」
「ノックくらいしろよ。いつもいつも」
「まぁそんなこと言わないで。真子ちゃんの着替え…」
彼女がそう言って紙袋から制服を出した際に、ポケットに入っている生徒手帳がポトリ。
「あ、ごめんなさい。」
「す、すみません。」
2人で一緒にしゃがみ込んだけれど、すみれさんの方が素早くて手帳を拾ってくれた。
「あら、真子ちゃん大和の隣の高校なのね」
「あ、は、はい。」
「どんな可愛い顔して写真に写ってるの?見ちゃお」
からかうように唇を上げて笑った彼女を止める暇もなく開かれた生徒手帳。
私……髪の毛ボサボサで写ってた気がするよぉ…
と恥ずかしがっても遅い。
「………え、笹本……」
しかしなぜかすみれさんの動きが名前を読んで止まってしまった。