「さぁ、降りて降りて」
楽しそうなすみれさんに抵抗する暇もなく、いつの間にか車を降ろされてそのままお店の中へ。
「真子ちゃん!ドンドン着替えるわよ!!」
「え、えー!!!」
まさに着せ替え人形のように次から次へと服を着替えさせられては
「きゃー!! 可愛いわぁ!」
なんて写真を撮られる。
どうしてこんなことに……と思ってはいたけれど彼女があまりにも楽しそうなので抵抗はできなかった。
何着も試着させられた後
「やだもう…ほんとうに可愛いっ!!」
ピンクのひらひらのエプロンスカートをすみれさんは、気に入ったようで。おまけにフランス人形みたいなウィッグまで……
「これください。このまま着て帰ります」
「え!!?」
しかも恐ろしいことに購入。
「大丈夫よ! 制服は預かっておくからね」
「い、いえ、すみれさんあの…」
綺麗にたたまれた制服は、強制的に紙袋にしまわれる。
おどおどしていると、やっぱりこの格好のまま私は彼女に手を引かれて車に再び乗せられた。
「…ああ、もう。最高ね。うちの父親ヤクザの組長でしょ? こういう可愛い格好とか絶対させてもらえなかったし、お人形ですら買ってもらえなかったからなんだか嬉しいわ。」
「……あ、そ、そうなんですね……」
確かに格好は可愛いかもしれないけれど、周りの視線が痛い。なんだか可愛いを通り越してる気がするのは、私だけなのかな…
「……似合ってるわよ。びっくりするくらい」
「…そうですか?でもこんな格好は初めてなのでその、恥ずかしい…ですっ」
ギュッとスカートを握って、熱くなった顔を隠すように俯けば
「真子ちゃんの恥ずかしがった顔とってもいい!ゾクゾクするわ!」
とすみれさんは意地悪な笑みを浮かべる
その顔がやっぱりどことなく大和さんに似ていて、ドキッと胸がなった。
それに…色っぽい。私もこんな風に大人の女性になりたいよ……
思わず見惚れているとエンジンをかけ、シートベルトをした彼女が、人差し指を頬に当てながらニヤリと笑う。
「せっかくだから大和に見せましょ」
「……へ」
そしてとんでもないことを言い出した。
「…家にいるかしらね。出発」
勢いよくすみれさんがアクセルを踏んだので私も慌ててシートベルトをしたけれど、なんともまずい状況だ。
「ま、待ってください!こんな姿見せられません!」
「…大丈夫。とっても似合ってるもの。ふふ…大和の驚く顔が目に浮かぶわ」
ダメだ……拒否権なんてない
あわわわわと両手で顔を覆って、面白がる彼女を横目に動揺が止まらない。
どうしようっ!!!

