ブーンと隣の車を抜いてスピードを出している車。隣から香るすみれさんの香水は、とてもいい香りだ。それにとても色っぽくて綺麗。この前は顔を見れなかったけれど、こんなに綺麗な人だったんだ……
「あら、なに?私の顔に何かついてる?」
「え、い、いえ! ご、ごめんなさい」
「どうして謝るのよ。ふふ……そんなに緊張しなくても悪いようにはしないわ。」
ニコリと笑った彼女は、とても艶っぽくて、それでいてどことなく大和さんに似ている。
「どこに…いくんでしょうか?」
「それは秘密。」
信号待ちで綺麗なネイルが光る人差し指を唇につけたすみれさんは、そう言ってウインクをした。
秘密なんだ……
「そんなことより真子ちゃん想像以上に可愛いわねぇ。大和にお友達が出来たなんて言うから、どんな子か興味あったけれど見に来て正解だわ」
「い、いえ、そ、そんな。」
「ヤクザなんて響きの悪いもの怖くないの? どうして大和と仲良くなろうと思ったの?」
一気に2つ質問が来て、私は頭の中でなんで返すか考える。言っていいのかな……一目惚れだって。
でもだけど…と悩んでいるうちに痺れを切らしたすみれさんが
「好きなんでしょ?大和が」
なんて質問をかぶせてきた。
思わず目を見開いた私を横目で見て彼女はクスクス笑う。
「ばれてないと思った? やぁね。ヤクザの息子なんかと好き好んで友達になるタイプじゃなさそうだもの。真子ちゃんは」
「あ、そ、そうですか」
思わず頬が熱くなっていって、サイドミラーに映った自分をみると真っ赤になっていた。
「もう可愛い!いいわね!青春!!」
「い、いや…あの」
「付き合わないの?大和だって喜ぶと思うわよ」
思わず え!? と大きな声
だけどすぐに否定のために首をブンブンと振った。
「そ、そんなわけありません! 私と大和さんはただの友達です!」
「えー……喜ぶわよ。最近しまりのない顔してるし」
「ま、まさか!私なんてそんな」
嬉しい気持ちと同時に、複雑なものも湧いてくる。もし、仮に奇跡が起こって、大和さんが私を好いてくれたとしても絶対に友達以上にはなれない。
その理由はこの場では言えないけれど。
「……私真子ちゃんに妹になって欲しいのに。お付き合いして将来はお嫁にきたらどう?」
「お、お嫁さんなんて滅相もないです!!」
大きくなっていく話に思わずまた首を激しく振ると、すみれさんはおかしそうに笑っていた。
「…ふふ…1つ1つ面白い」
大和さんと違って、彼女はとてもおしゃべりみたい。
からかわれているうちにいつのまにかブレーキが踏まれて、あるお店の前で車が止まった。
「…え」
「あのね、私妹ができたらやりたかったことがあるの!!真子ちゃん! 着せ替えごっこさせてね」
すみれさんのいたずらっ子みたいな顔に、私は冷や汗をかく。まさか……このお店?
「きっと似合うわよ!ロリータファッション!!」
そこはヒラヒラのエプロンスカートのような服に、大きなリボンをつけたマネキンが飾られている。
……一体なにされちゃうの?

