警察一家の娘恋した相手はヤクザの息子でした



聞き間違いじゃないだろうか。
冷静にそんなことを考えた。
だけどすぐに大和さんが



「苦手なものは全部で持ってくりゃいい。1から教えてやる」


なんて言うもんだから、どうやら間違いではないみたい。


「ほ、本当に?本当に良いんですかっ??」


「当たり前だろ。」


「も、持っていきますっ!よろしくお願いしますっ!!」


嬉しすぎる。大嫌いな勉強がこんなところで、私に喜びを与えてくれるなんて誰が想像できただろう。


「…喜びすぎだろ。」

「だって嬉しくて、私頑張れそうですっ!!」


いきなり上がった向上心のせいか、グッと自然に拳が出来上がった。そんな私を見て優しく笑った大和さんは



「お礼は高くつくぞ」


なんていたずらっこみたいな顔をする。



「お、お金とるんですか?」


「…ぷっ…んなわけねぇだろ。まぁいい。週末は勉強会だ。」


「は、はい!先生!!」


テンションが上がりすぎて、そんなノリを見せたら大和さんはどことなく楽しそう。そうこうしているうちに駅の前に着いてしまって、私はぺこりと頭を下げた。



「…週末楽しみにしておりますっ!」


「…ああ。俺も。」


嫌なことがすべて帳消しになりそうなくらい心が幸せで満たされていて、それをどう言葉で表したらいいのかもわからない。



もう一度お礼を言って、駅の階段を降りてる最中もずっと大和さんが頭から離れてくれなかった。




友達として…友達として……


それ以上は何も望んでないと自分に言い聞かせる。
きっと彼だって、友達として優しいに決まってるんだ。
そうでもしなきゃ私なんて相手にすらされてなかったと思うから。




思い出してついニヤッと笑顔ができてしまったけれど、人がいることを思い出してすぐに引っ込めた。




頭の悪さにひかれるかもしれない……大丈夫かな……


不安も考えたけれど、いまは週末も会えるという楽しみだけを胸に今週を乗り切ろうと決めたのだった。