警察一家の娘恋した相手はヤクザの息子でした



駅までの道、大きく差のある身長差で隣に並び歩けばそれはやっぱり目立つ。だけど、この前のように私の足の速さに合わせてくれる大和さんは、歩きにくいはずなのに私を置いていったりはしなかった。


「あの、今日はいきなりお邪魔したのにありがとうございました。」


「いや、こっちこそ狭いクローゼットに押し込んで悪かったな。」


「あ、い、いえ。あ、そうだ、クローゼットに入っていたせいか服にどことなく大和さんの香りがついてて包みこまれてるみたいです。私この香り好きです……お揃いですね」


何気なく言った言葉にカッと目を見開いた彼は、顔を背けると


「…お前それ天然で言ってるなら厄介だな」

なんてつぶやく。


「え、わ、私変なこと言いましたか?」


「……かなり」


「あ、それは……ごめんなさい」


正直、大和さんと話しているときは大半何をしゃべっているのかわからないのが本音。だって心臓は常に痛いくらいドキドキしているし、隣にいるだけで体温が上がる。



おかしな発言をしてしまったところで自分で気づけないよ……。




心の中でそんなことを思って足を動かしていると、駅がみえてきてしまった。もうすぐお別れなんだなと思った途端、切なくなる胸。




「…真子」


「あ、は、はい」


すると突然名前を呼ばれて、思わず肩が跳ねる。


「お前、今度の週末は何してんだ。暇なら空けとけ」


そしてそのまま夢のような言葉が降ってきた。



え……空けておけってことは、大和さんに会えるということ? 遊ぼうって誘われてるのかな……


短いセリフだったのに、胸が高鳴った上期待が膨らんでいく。だけど、すぐにどん底に落とされることになった。



「だ、ダメです……」


「なにかあるのか?」


「うう……もうすぐ期末テストなんです……」


泣いてしまいそうだ……
せっかく誘ってもらえたのに。まさかテストという壁に当たってしまうなんて。



「だから?」


「え、い、いや、私頭が悪いので勉強を怠ると赤点だらけになるんです……」



恥ずかしすぎる告白に、彼は固まってしまった。



「……んなに真面目そうなのにか?」


「……勉強はどうしてもダメで……」


幻滅されるだろうか。


そう思ったけれど大和さんは、笑いを噛み殺してゴホンと喉を鳴らす。



「なら教えてやるよ。勉強」